「あのな。
軽トラック、車検さ出したっけ、下の本体が錆びてボロボロになっているから車検通らね、って言われてな。『この車良いんでねが?』って薦められて、買うことにしてきた。」
父が数日前の朝、私に言う。
「ふ~ん、どんな車?」
「おらわがんねげど、軽の乗用車だ。なんとかっつ車だって言われたけど、おらわがんねも。」
父は車には詳しくないが、長年つきあって来た整備工場だからと信用して契約をしてきたらしい。
そして、先週の金曜日に納車になった。
でも私も彼も仕事のため確認するのは日曜日になった。
日曜日、朝食を済ませると早速父の新しい車がどんなか、見てみようという事になった。
(父の車だけ)車庫にあるので、私が出して来ることになった。
まず、外回りをチェックしドアを開け、中の状態をまじまじと見まわし、運転席に座りハンドル回りを確認し、エンジンを掛ける。
エンジンは一発で掛った。(当たり前か)
なんだ?ガソリンがEじゃないか。
ん?走行距離99150・・・?
え?!もうすぐ10万キロなの?
とりあえず車庫から出して、彼にバトンタッチ。
父はこれまでマニュアル車だったのだが、今回はオートマが楽だからとオートマにしたので彼が運転教習をするのだ。
といっても、父はこれまでもオートマは時々運転していたので特に教習はいらないのだけれど、高齢者のオートマによる事故が多く報道されているので。
「爺ちゃん。ヒーターはここで、ワイパーはここで、ボンネットはここで・・・・・」
彼が一通り一緒に操作しながら教えていた。
一度降りて来た彼が
「この車、もうすぐ10万キロだべ。高くねが??」
「し~!私もさっき確認してびっくりした。でも、父ちゃん喜んでいるから今は知らんふりして。ホントに高いか安いか私たちだけで判断できないから。」
父には内緒であちこちに電話やメールをして、この車の値段が適切かどうか聞いて回った。
結果。高すぎるという結論に達した。
夕食時。
「父ちゃん、この車。あまりにも高すぎるから返品しよう!!?」
「なにや?!おら、わがんねがど思って、高く売られたのが?」
整備工場とすったもんだの挙句、違約金を支払って車は返品した。
もう、あの工場とは取引できないだろう。
「ほで、おめが行ってる整備工場さ車頼んでけろ。」と言う話になって、私がお世話になっている工場に父が希望する車を探して欲しいと依頼した。
そして今日、父はなかなか風邪が良くならないと、病院を替えたので今日も病院に行っていた。
夕方。
誰かが訪ねて来た。
「先程、こちらのお爺さんが私の所に来て、軽トラが欲しいと言っていたので、丁度こちらの方に用事があったので寄ってみました。」と。
「はぁ?父がですか?トラックを?」
「はい、私より2時間ほど先に帰られたのですが、まだお帰りじゃないですか?このトラックなんですが・・・・」
(内心)父ちゃん、勘弁してよ!私も迷惑だし、あっちの車屋さんもこっちの車やさんも迷惑だよ!!それに、トラックじゃなく今回は乗用を、って言ってたじゃない!
数十分後、父が帰って来た。
案の定、途中の親戚の家に寄って来たらしい。
「なにや?来たってが?
何だって気の早い。売りでんだべな。」
「名前も住所も教えて来たんなら、買う意思がある。って言って来たようなもんだべ!!」
「ほだって、世間見てみねげ、高いか安いかわがんねべ!!」
だったら、最初から世間見て回るべきだったろうに!!
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