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軍人恩給欠格者

「総理大臣から『賞状』が送られて来た!」父が嬉しそうに封書を持ってきた。
(そういえばこの間、そんな話をしていたっけ。)

「先の大戦における御労苦に対し・・・・・」福田総理大臣の名前が入ってはいるが、活字で印刷されたA4の厚紙だけ。
「額は自分で買わねけねのが・・・?」

父は戦争に行っている。

結婚して子供を授かったばかりの昭和17年に、いわゆる『赤紙』で招集命令が下され、泣く泣く家族と引き離されて戦場に引っ張られていった。
もう生きて戻ることは無いだろうという思いをこらえながら。

私は良く分からないが、5年以上戦地に出兵していた人には、『軍人恩給』なるものが支給されているらしい。
本人が死亡した場合はその遺族に支給されるらしい。

が父の場合は、後2、3か月で5年というところで終戦になったらしい。
受給資格に3か月弱足りないのだ。

その僅かの差で恩給を生涯貰える人とそうでない人と。

父は言う。
「自分から入隊した(覚悟の上で、職業として軍隊に入った)人達は上の地位に就いていて、年数も努めていたので、それ相当の額の恩給を貰っている。
俺のように無理やり連れて行かれ、足かけ5年も生きた心地がしなかった生活を強いられた人達には何もないなんて。」と。

父が頂いたという『賞状』は、本当は賞状ではなく、内閣総理大臣名の書状というものらしく、平和祈念事業特別基金と言うところにこちらから請求をして、貰ったもの。
父はたまたま役所に行った時に『特別記念事業』というポスターを目にして知ったが、父の同年兵だった人たちは、自ら役所に出向くことも無い人が多く、
知らない人も沢山いることだろう。

そういえば、海部総理の名前の入った書状と天皇ご一家の御写真の入った額を何年か前にも頂戴している。

が、私から見ると、そんな書状なんて何の意味があるのかと思う。
総理大臣名を入れただけの紙切れではないか。
そんな紙切れなら私だってこのパソコンと持っているプリンターで簡単に作れるのに・・・。
その書状を見せたら、欲しいものが手に入ったり、お腹いっぱい食べられたりするのならかなり凄いものだけれど・・・。

その書状の他に慰労品(気休め程度)も貰えるらしい。
それでも父のような恩給欠格者にとっては、少しは心の慰めにはなるのだろう。

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『こごみ』ほげでしまった

先日の日曜日、彼と出掛けて立ち寄った場所で食べ頃の『こごみ』を見つけた。
えっ?こごみもう出てるんだ?

家に帰ると急いで毎年取りに行く場所(裏山)に行ってみた。
なにせ我が家の畑には、今食べられる物が何も無いので、山菜でも取らないと食卓に青物が全く無い状態なのだ。

が、山は変わっていた。

木々が大きく成長して欝蒼とした藪、隣合わせのスギ林の枝が切り落とされていて、その枝が地面を覆っていた。

この辺にこごみが出ていたんだけど・・・

探してやっと見つけたこごみはもう過ぎていた。

開いてしまったが、穂先はまだ柔らかいので穂先だけ摘んで帰った。

毎年、五月の連休に採りに行くとちょうどこんな状態だったのに、連休まではまだ二週間もある。
これも地球温暖化のせいなんだろうな?

『こごみ』の穂先は茹でて、胡麻和えにした。
とても美味しかった。

毎年、春一番の山菜を食べるとやっと春が来たなぁと感じる。

今年も春が来たんだなぁ。

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高齢者と農業機械

「おー、おー!!」
父が畑から私を呼んでいる。
私はおーじゃないんだけど。

行ってみるとキャリアを動かしている。
畑に大きな石があるから移動するのを手伝ってくれと言うのだ。

私がキャリアを動かそうとすると
「いいがら、おめぇは石を乗せろ」という。

畝を立てた畑を横切って、父がキャリアをバックさせる。
膝が曲がってゆっくりとしか歩けない父は、機械に押されながら「よたよた」と見ていられない。

前進は心配ないが、バックでキャリアに引かれてしまうという事故がよくあると聞いている。
実際自分も運転して、ひゃっとしたことがある。

でも父は慣れたもので、私の心配をよそにキャリアを動かしている。

父はいつもやっていることなんだ。
私が赤子を見守るように心配しても今だけで、だからどう出来る訳でもないんだ。
と気づいた。

田んぼの仕事が始まった近頃、通勤途中に田んぼで仕事をしている人を良く見かける。
それは決まって高齢者。
あの人は父よりちょっと若いかな?
あの人は父と同じくらいかも?

そんな年老いた人たちが頑張っている。

乗用のトラクター等に乗って運転していると立派に仕事が出来ている。
が、降りると・・・膝が曲がってよぼよぼとしか歩けない。

近年、トラクターの下敷きになったとか、機械に巻き込まれたとかの事故が多発しているニュースを聞く。
自分も運転してみて何度か怖いと思ったことがある。
私の場合、とっさに避けることが出来たが父のように機敏に動けなくなった高齢者では、避けきれないこともあって当然だと思う。

超高齢化の農業従事者。
機械に頼らずには続けられない農業。
その割には利益が少なく、農地を荒らしたくないというだけの一心で農業を続けている人もかなり多いのは確か。

中国産の餃子の事件をきっかけに、もっと日本の農産物の価値を見直して欲しいものだ。

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父の心配事

「勲(仮名)さ電話したが?」
「しろよ!おめだず兄妹なんだから、皆すてなんとかしねけ、わがんねんだど。自分だちばり良いったって、そんでは駄目なんだがらな。」

父が毎朝のように、私の顔を見る度に言う。

勲は私の兄。

年老いて身辺整理を始めている父は、先日田畑の名義を私に替えて一安心していた。

さて、残る心配は兄の事。
兄は56歳。未だに独身なのだ。

内縁関係になっている彼女がいるらしいという話を聞きつけ、早く結婚するように私たちに説得しろと言うのだ。

兄がさっき、父を心配して電話をくれた。

当然その話になる。
「俺が行ってその女の人を説得するから。」とか言っている。

結婚=『幸せ』じゃないし、=『安定』でもないんだけどね。
その辺、話の分かる父のようだけど、やっぱり昔の考えから抜け出せないんだな。

もしかして?
兄の事が解決したら、また私達の事に気を揉むのかも?
なにせ、私たちは三人家族で3人とも苗字が違うから・・・

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健康的な自給自足

今朝も雨。
このところ毎日のように雨が降っている。

「この雨が上ったら『こごみ』が出るんでねが?」
父が朝食を食べながら口を開いた。

「畑さ、何もねぐなったがら、こごみでも採って来ねげ、何も食うものねぇがらなぁ。」

冬を越した野菜が数種類あったのに、父は私の言葉には耳も貸さずに、それらを全部取りはらい、トラクターで畑全体を天地返ししてしまったのだ

「『ひろこ』はもう終わりだ。今食えるのは、ばっけぐらいがな?塔立ったばっけも、うめぇもんだど。」

父は『野菜を買って食べる』という考えは全く無いようだ。

食卓には干し大根の煮物、残っていた白菜の一夜漬け、家の敷地内で採ったわさびの酒かす漬け、じゃが芋・人参たっぷりの味噌汁が並んでいる。

青物野菜が無いと寂しいので、我が家の池に自然に生えているセリも茹でた。

父のやり方には賛成できない部分も多いが、我が家はなんて健康的な半自給自足。

食の安全が取り沙汰されている昨今、父のような生き方は素晴らしいと思う。

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父の自信??

先日、急かしい父の事を日記に書いた次の日の事。

後から起きて来た父が、薄暗い朝に「雨降ってんのが?」と聞いてきた。
「雨でね。雪降ってるよ。」
「なにや?雪だってが?」

父はその前の日も、畑仕事を頑張っていた。
だが、頑張って蒔いた種は今朝はもう雪の下。

父の蒔いた種は目が出るのだろうか?
たとえ芽が出たとしても、やっと芽が出たとたんに雪や霜にやられてしまうかもしれない。

だが、私の心配をよそに父は動じない。
信じられない!

にやにや笑いながら、「四月になっても雪降ることはあるからな」と。

なんなんだ、その自信は??!

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